平凡太~ヘイボンタ~の恋
「もう…お別れなのかもしれない」


「え…?」


墓石の花がかすかに風で揺れる。


それを見て、一華先輩は小さく笑った。


「バイバイ…。『友詞』」


お別れと言ったその意味。


バイバイと言ったその意味。


ボクは掴めずに、ただ一華先輩を見つめた。


「平太くん」


「ハイ?」


「ここに連れて来てくれて、ありがとう」


笑った一華先輩の目に、もう涙はなかった。


「パパー、ママー!ちょうちょ、つかまえたよー!」


かけてきた詞音ちゃんの手の中の蝶は。


ヒラヒラと空高く舞い上がっていった。


「バイバイ…」


もう一度呟いた一華先輩は詞音ちゃんの手を取り、


「じゃ、帰ろっか!」


いつもの笑顔を向けていた。


いらなくなった『友詞』の影に。


ボクはサヨナラできなかった。
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