恋するイケメン
駅前を通りすぎ、亜由美の家の方へ向かって歩く。

会いたいと焦る気持ちと、拒絶されたらと不安な気持ちが歩く速度を落とす。

賑やかな人混みの中、目立つカップルが近いてくる。
鋭い視線を俺に向ける。桜華女子生徒会長『桜川 聖 』。

二人は、無視して通りすぎようとした俺の前で立ち止まる。


「退けよ…。お前の相手してる暇ないんだけど…黒兎。」

「亜由美さんなら今、送ってきたところよ？
ね？ちぃ？」

俺に鋭い目を向けたまま、隣の男に話をふる。
『ちぃ』と呼ばれた男は、黒兎よりも少し低い背丈に、スラリとした美形で、困ったように苦笑して頷いた。

「………。」

黙っている俺に小さく舌打ちした黒兎。
ヒラヒラした可愛い服をきた美少女に周りの視線が集まる。

「何も言えないのかしら？」

「お前に話す事はない……。」


何でお前話すんだよ…。
2人の問題を他人に、しかも黒兎なんかに話すわけがない。

お互いに睨みあっていると、

「それくらいにしてあげなよ。」

黙って見ていた男が口を挟む。
男に視線を移すと爽やかに笑顔を向ける。




< 143 / 156 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop