リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・14
口ではそう言いながらも、顔は喜んでいる。

「…ねぇ、前から一度聞きたかったんだけど」

唇に息がかかるように、わざとしゃべる。

「なに?」

「なぁんであたしの面倒を見ているのよ? 恋人として求めていないのに、どんな魂胆なの?」

そう、ハッキリとコイツから告白されたことはない。

けれどあたしが『抱き締めてほしい』と言えば抱き締めてくれるし、『キスしてほしい』と言ったらキスしてくれる。

でもコイツからは、一度たりとも求められたことはない。

いつだって、あたしの方から言っている。

「魂胆なんて人聞きが悪い。ただ俺は、お前が俺なしでは生きられないようにしただけなのに」

…何か今、とてつもなく物騒な言葉を聞いた気がする。

「…はい?」

「だから、もうお前は俺なしでは生きられないだろう? 今までたくさん面倒をみてきて甘やかしてきたのは、そういう下心があったから」

爽やかな笑みを浮かべながら言っても、その意味の黒さは隠せない。
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