先生と執事【続・短編】
一人の男の子の指先を辿るように、隆也君はゆっくりと私の方へと視線を向ける。
引くのが遅かった、遅すぎた。
こんな大事になるくらいなら、練習後とかもっと時間を考えて動くべきだった。
第一、今ここで隆也君に知らないふりとか忘れられてたら、私はどうしたらいいんだろうか。
相手のことも、自分のことも考えられてなかったな…。
「すみません、もう帰り…「っっ永愛!!永愛じゃんか!!」」
「っっえ………。」
あぁ、ちゃんと気づいてくれた…覚えてくれてたんだ…。
さっきまで不安だらけだった心が、不思議と一気に満たされていく。
「何、隆也知り合い?」
「え、妹とか?」
「ばーか、ちげぇよ。入院してた病院で知り合った子なんだ。永愛、約束のことしにきてくれたの?」
「は、はい!!」
さっきまでとは違う緊張が私を襲う。
逃げたいような、でも心地いいような…。
「隆也君、これ良かったらどうぞ。」