先生と執事【続・短編】
不思議そうな顔のまま、瞬輝と顔を見合わせる。
瞬輝も私と同じ気持ちなのか、眉をよせて不思議そうな顔をしていた。
「……どうゆうこと?」
毎日、当たり前のように使っている『おかえり』という言葉。
それは家で使う事以外の経験はなく、まして今まで意味など考えたこともなかった。
家に帰ってきた人に『おかえり』という。
これが当たり前で、それ以外は知らない。
知ろうともしたことはない。
…こう考えると、当たり前って怖いことだよね。
「おいで、二人とも。」
ベッドから少し離れていた所に立っていた私達に、お母さんが手招きをする。
それに導かれるまま近くにいくと、暖かい手が私達の手に触れた。
「前ね、上田のおじいちゃんに言われたことがあるの。おかえりには沢山の意味があるんですよ…って。家に帰ってくることだけがおかえりじゃない。大切な人のもとへと戻ってくることも、おかえりの大切な意味なんですよってね。ふふっ、ただの受け売りなんだけど、お母さんはこの意味凄く好きなの。」