残酷な華



伊藤君が去って私もようやく正気を取り戻したころだった。



こういうとき本当に安西君の存在はありがたい。


何も言わないけれど近くで見守ってくれている。


それが空気で伝わってくるのが嬉しい。








「このまま私たちに伊藤君の死を見せるつもりなの?伊藤君が“赤”のスイッチを押すところを?」




唇が乾ききった私の口から飛び出した言葉は自分でもびっくりする内容でびっくりするような低い声だった。



「当たり前じゃない。クラスメイトが騙されながら自分たちは何もできずに死なせてしまう・・・あまりにも残酷で美しいでしょう?」





狂ったように笑いながら去っていく巴をぼんやりと見つめていた。





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