A'lice
-美術館-
「有栖! これ行こうよ!」
昼放課、机に突っ伏して寝ていたわたしの耳に甲高い声が届いた。
眠い目を擦りながら声の方を見る。
「あ、寝てた!? ごっめん!」
机の下側から栗色の瞳を向けて、親友---松笠朝水(まつかさ あさみ)は申し訳なさそうにわたしを見つめていた。
幼稚園からの付き合いだけど、こういった純粋さは全く変わらないから不思議だと思う。
やれやれ、とため息をついて、わたしは彼女を見た。
「いや、いいけど…なに?」
朝水は手に持った雑誌をわたしに差し出して「美術館いこうよ!」と誘いをかけてきた。
からの、フリーズ。
え、今なんていった?
映画ですら眠いとか言い出すこの子が美術館? え?