A'lice
午後3時。
わたしたちは約束通り、桜市美術館に来ていた。
美術館なんて、高校一年の社会見学以来だから、一年ぶりくらいかな。
独特のにおいと静けさが、心を落ち着かせる。
普段にぎやかな朝水も、静かに感嘆の声を上げた。
「やっぱり、画集よりもすごいねぇ」
「そりゃそうでしょ。画家の魂の欠片みたいなものなんだから」
「そっかぁ…。すごいね…」
「ふふ、朝水は素直だね」
16:9の大きな絵を見上げながら、わたしは笑みをこぼす。
まるで、昔読んだ絵本---不思議の国のアリスの世界が今にも飛び出して来そうで。
息を呑む。