愛しい人~出逢いと道標~
「嫌だったら答えなくていいから」


運転し、前に視線を向けたままこちらに問いかけてきた。

その問いと同時に肩に力が入り、顔が強張るのが自分でも分かった。


「歳はいくつ?」


私が一番聞かれたくない質問ではなく少しだけ安心した。

しかし、安心もほんの一瞬だけで、本当の年齢を言おうか迷う。



十四歳



中学三年



これを聞かれたら、このトラックから追い出されてしまうかもしれない。


「いくつだと思いますか」


言ってから後悔した。

折角、男の人が「嫌だったら答えなくていい」と言ってくれたのだから黙っているか、答えたくないと返事すればいいのに、わざわざ自分から年齢を知らせる方向に持っていくなんて。



申し訳なさそうに男の人を見ると、信号が赤で止まっていたということもあり、こちらを見ていて目が合った。

私は目を逸らしたが、男の人はそれでもこちらを見ていた。


(早く信号変わってくれないかな)


見られているのが恥ずかしいということ以外に、もう一つ別の思いがあり、早くトラックが動き出すことを願った。
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