愛しい人~出逢いと道標~
トラックが動き出し、男の人の視線は前方に戻った。

悪い人ではないのだろうが、この人のことを私は何か苦手としている。


「高校生くらい」


小さな音量で流れるラジオに耳を傾きかけていたところに、突拍子もなく答えてきた。


「惜しいです」


苦手な相手と認識したはずなのに、ここでも正直に答えてしまった。



不思議な人だ。

この人の前では嘘なんてつけそうもないし、つく必要がないとすら思えてくる。


「じゃあ、中学生か」


そう言われると、私は何も答えずに下を向いた。

男の人は何も意識せずに言ったのだろうが、今の一言が私に重くのし掛かってきた。

中学生の女の子という、一人ではまだどうすることもできない無力さを、形のないもので目の前に差し出された気がした。
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