愛しい人~出逢いと道標~
「まさか、会って二時間くらいの人に気付かれるとは思わなかった」


大げさに両手を広げて、ため息交じりに言った。

言い終わった後に少しだけ言いすぎたかもしれないと思ったが、もう今の私は別にこれで嫌な奴だと思われても別に構わないとさえ余裕を持つようになった。



その私を見てかどうかは分からないが、男の人は口に軽く握りしめた手を当てて笑った。


「別にいいじゃねえかよ」


どういう意味の『いい』なのか、瞬時には分からなかった。

わざと私にそれを理解させようとしているのか、男の人はその言葉の続きをすぐには出してこなかった。

一体、今の言葉にはどういう意味があるのだろう・・・



考えても答えは出てこない。



というよりは、頭の中にはいくつもの答えらしきものがあるのだが、どれが正解なのかが全く見当もつかない。

早く続きの言葉を聞き出したくて、わざと男の人に向かってしかめっ面をしてみせた。

すると、男の人はもう一度を口に手を当てて笑ったが、それでも続きの言葉は出してこなかった。
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