愛しい人~出逢いと道標~
結局、続きの言葉が出てくる前に店の駐車場に着いてしまい、午前中同様に男の人は店舗に商品を持っていき、私は外で待っていた。


別にいいじゃねえかよ


その言葉が頭の中に何度も繰り返される。

何に対して『いい』と言われたのか、それを早く聞きたいのだが男の人は続きを出してはくれない。





「さっきの言葉・・・」


トラックの中に戻り、このままだと男の人は焦らすだけ焦らされそうだったから私から聞いていた。

男の人は少しだけ呆気に取られたような顔をしたが、すぐさま思い出したかのように手を小さく叩いた。


「別にさ、周りから何と思われようともお前はお前で、お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだよ。

『人の面(つら)借りて道歩いてんじゃねえ、てめえはてめえの面で道を歩け』ってな」


その言葉が私の胸をちくりと刺し、水がしみ込むように胸の中に入っていった。

言い方は棘があるが、その通りだ。

それに対して私は返す言葉を何も持っていなかった。
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