愛しい人~出逢いと道標~
「入瀬達也(いりのせたつや)
「えっ」
「えっ、じゃねえよ。
名前だよ、名前」
店舗から戻ってきた男の人は、トラックの後ろの扉を開けると突拍子もなく名前を言い出した。
そして、今になって自分が名乗っていないことと、相手に名乗られていないことに気付いた。
「そっか、まだ言っていなかったね。
私は前橋由香」
名乗ったはいいものの、入瀬達也は聞いている様子もなく台車を片づけて運転席のほうへと戻っていった。
(聞こえたのかな)
それとも、私の名前などに興味はないということか。
折角、名乗ったというのに素っ気ない態度を取られて、ふくれっ面をして気分を害していることが自分でも分かった。
それでも居心地が悪いとか、そういう空気ではないから別に構わないと小走りで助手席へと戻った。
「えっ」
「えっ、じゃねえよ。
名前だよ、名前」
店舗から戻ってきた男の人は、トラックの後ろの扉を開けると突拍子もなく名前を言い出した。
そして、今になって自分が名乗っていないことと、相手に名乗られていないことに気付いた。
「そっか、まだ言っていなかったね。
私は前橋由香」
名乗ったはいいものの、入瀬達也は聞いている様子もなく台車を片づけて運転席のほうへと戻っていった。
(聞こえたのかな)
それとも、私の名前などに興味はないということか。
折角、名乗ったというのに素っ気ない態度を取られて、ふくれっ面をして気分を害していることが自分でも分かった。
それでも居心地が悪いとか、そういう空気ではないから別に構わないと小走りで助手席へと戻った。