愛しいひと
『凛、大袈裟』
「いやいや、今の言葉は、史上最高の言葉だよ。」
うんうん。と頷いた。
ひとしきり頷いた後、思い出したかのように、手を打った。
「あっちはいいのか?せっかく受験して、エスカレーター式の中学に入ったのに。」
『別にいいよ。』
あっちの学校は、親が勧めたから、適当に行ってみただけなんだよね。
「あらら、親泣くぞ」
『普段から、親泣かせてるあんたに言われたくないな。』
凛は不良だ。
学校内で凛を知らない者はいないだろうし、外でも十分知られているだろう。
「あはっ」
『あはっ、じゃないっつの。』
普段はこんなに可愛いのに、喧嘩は敗け無しって、どういうことよ?
「あら、春瀬さん」
このお上品な喋り方。
相変わらず、鼻につく。
「今回は大変だったわね。学校側が問題を起こすなんて。」
『ホントにね。』
この子は、綾川 由梨。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花・・・・って言葉がぴったりの美人。
中学生でここまで綺麗だと、何も言えないよね。
「それでは、失礼」
特に会話することもなく、由梨は立ち去った。
「相変わらず、美しいことで。」
『ねー。羨ましいわ。』
凛と2人、顔を見合わせ、ため息を吐いた。