愛しいひと
噂の彼
なんだか、上手く乗せられた気がする。昔から、凛は人を操るのが得意だったもんな。
「"操る"とか人聞きの悪いこと言わないでよ。」
『本当の事だろ。』
何やかんや言いつつも、体育館に到着。今は、放課後だから、部活動生が部活に汗を流していることだろう。青春だねぇ。
なんて、眩しそうに目を細めていたら、凛が腕を引いた。
「ほら、志歩、あれ」
凛が指差した先には、ゴールに向かって行く、男の子の姿があった。
1人2人と抜き去って、あっという間に、レイアップを決めた。
【華麗】
一番しっくり来る言葉。
『すごい』
見事だと思う。素人のあたしから見ても、彼の巧さが分かる。
「な、かっけーだろ?さらに、顔見てみ?」
凛の言う通りに、振り向いた彼の顔を見てみた。
『・・・・わぉ』
「な!まさに"わぉ"だろ?」
驚くのも無理はない。
なんたって、美形だから。
髪は短い黒。
高い身長に、スラリと伸びた長い手足。
広い背中と凛々しい横顔。
なるほど、こりゃカッコいいわ。由梨が惚れるのも頷ける。
『さすが、由梨。またレベル高いの選んだね。』
「だよな。・・・・あ、あの人、倉島 尚樹って言うんだぜ。」
『名前まで男前だな』
真剣にボールを追う姿に、回りの女子は、顔を赤らめていた。