あの人について
 
 
記憶は必ずモノクロになる。



口癖は覚えていても、
その口癖を話すあの人を
リアルに頭に浮かべることができない。



思いだけがいつまでも
胸の中にくすぶったまま。



行き場のない感情として
フワフワ浮いている。



いつになれば私は解放されるのだろう。

いつになれば、
街で黒い車が通りすぎる度に
無意識に目で追い、
運転席やナンバーを確認してしまう癖を
やめられるんだろう。



あの人は何をしているんだろう。
どこにいるんだろう。
誰を想っているのだろう。
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