俺は彼女の目です。
【輝汰side】


俺は街を歩いていた。



これと言って目的もなく、フラフラと。



昼間の街は地方でも人が多い。



人々は互いにぶつからないように、黙々と目的の場所に向かって歩く。



無意識のうちに人を避ける。



――――そんな無意識の何気ない行動が、優衣にとっては意識してでももう容易にできることではないのだ。



優衣にとってそれがどんなに困難なことなのか俺にはわかる。



いくら全国でトップに君臨する族、御影桜の総長でも目が見えないと何も出来ない。



自分の身を守ることも、普段の生活でさえも思い通りにいかないのだ。



俺の顔も…もうみえないんだ。
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