悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
――――5分後。
10階にある展望レストランの窓際の席に案内された灯里は思わず感嘆の声を上げた。
「すごい……」
晴れ渡った冬空の下、紺碧の海が陽の光にきらきらと白く輝いている。
空と海の境をタンカー船がゆっくりと沖の方へ進んでいく。
灯里は眼下に広がる景色に目を輝かせた。
向かいに座った晃人が灯里を優しい目で見守るように見つめている。
「昔、お前と来たことがあったな。レストランではなく展望台の方だったが」
「そうだね。あたしが小学生の頃かな?」
「あの時は夏だったか……。あの時は霞んでいてあまり見えなかったが、今日は遠くまで良く見えるな」
晃人も懐かしそうに窓の外に視線を投げる。
灯里は晃人の横顔をちらりと見た。
晃人はあの頃に比べて格段に格好よく、大人になった。
けれど二人の間にある思い出は変わらない。
二人で共有した懐かしい日々は灯里にとっても、そして晃人にとっても何にも代えがたい大事なものだろう。
と景色を眺める二人に、店員が声をかけてきた。
「お客様、お食事はいかが致しますか?」
「そうだな、では……」
晃人がメニューを広げ、手早くランチコースを注文した。
相変わらずスマートなその所作に思わず視線が吸い寄せられる。