悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
晃人は灯里の背後に回り、ほつれていた髪を手早く整える。
思わず頬を染めた灯里の耳に、晃人が後ろからそっと囁く。
「会社では絶対に髪は下ろすな。わかったな?」
艶のある低いバリトンの声に腰が砕けそうになる。
――――やはり、危険だ。
というか出勤前にこんな声を聞かせないでほしい。
上目遣いで振り仰いだ灯里に、晃人はくすりと楽しげに笑った。
「さあ、行くぞ」
「……うん」
やはり自分はどうあっても晃人には敵わないらしい。
灯里は晃人に続き、玄関を出た。