悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
『大丈夫だ。お前が作ったものなら、中が塩だろうと唐辛子だろうと食べることはできる』
『……そんな昔のこと、よく覚えてるね……』
『忘れようとしても忘れられない思い出だからな?』
晃人は目を細め、愉しげに笑う。
――――小学校低学年の頃。
灯里が初めてチョコレートを作った相手は晃人だった。
しかし作り方が良くわからなかった灯里は、キッチンにあった調味料を適当に混ぜ込んでしまった。
今思うとあの劇物をよく晃人が食べてくれたものだと思う。
『大丈夫だよ。今回はチョコと砂糖しか入れてないから』
『それを聞いて安心した』
晃人はくすりと笑い、くしゃっと灯里の髪をかき撫でた。
包み込むような穏やかな笑顔は昔から変わらない。
この笑顔をずっと傍で見ていたい、と灯里は心から思った……。