悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
と、考え込みながら歩いていた時。
灯里の前に見覚えのある女が姿を現した。
「お久しぶりね」
女は肩のところで切り揃えられた艶やかな黒髪を揺らし、ゆっくりと灯里の方へと近づいてくる。
――――九条朝子。
灯里は足を止め、息を飲んだ。
朝子は灯里の前で足を止め、腕を組んでじっと灯里を見据える。
その瞳に宿る憎しみはあの時と全く変わっていない。
「身を引けと忠告したのに……。あなたまた、痛い目に遭いたいの?」
「……」
「それとも、その貧相な躰を痛めつけたところであまり意味はないのかしら?」
口元を軽く抑え、くすくすと朝子は嗤う。
灯里は無言でじっと朝子を睨みつけた。
晃人が将来、誰を結婚相手に選ぶのかはわからない。
けれど、こんな歪んだ人を選んでほしくはない。
――――晃人の幸せは、この人とではありえない。