悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
一時間後。
灯里は晃人のマンションの前で立ち尽くしていた。
朝子の言葉が耳に染みついて離れない。
『あの部屋の物は全て、晃人と私で選んだものよ』
思い返してみれば、確かに食器類は一人分にしては多いような気がした。
それに部屋自体が広めな造りになっていることを考えると、あの部屋は単身用ではないのだろう。
灯里は涙に滲んだ瞳でマンションを見上げた。
マンションに入らなければと思っても、どうしても足が動かない……。
「……っ」
灯里はしばらくその場に立ち尽くした後、唇を噛み締め、踵を返した。
晃人と住んでいると言ってある以上、実家に帰るわけにはいかない。
下手したら晃人が実家まで迎えに来るかもしれない。
であれば、今夜はビジネスホテルにでも行くしかない……。