悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
一時間後。
食事を終えた二人は食後の飲み物を前に談笑をしていた。
食事は創作イタリアンで、前菜のサラダからデザートに至るまでどれも美味しかった。
コーヒーカップを手にした灯里の向かいで、晃人は優雅に紅茶のカップを傾けている。
晃人が紅茶好きなのは昔からだ。
昔晃人の家に行くと、いろいろな種類の茶缶がキッチンの棚に並んでいた。
灯里が『お紅茶飲みたい』と言うと、晃人は灯里が好みそうな甘い香りの紅茶をよく淹れてくれた。
『これはダージリン。マスカットみたいな香りがするだろう?』
『うーん、よくわからないや……』
『お前にはミルクティの方がいいかもしれないな。アッサムにしようか?』
『うん!』
晃人が淹れてくれるミルクティは鍋で牛乳を沸かす本格的なやり方だ。
灯里はこれまで晃人が作ってくれたミルクティ以上のミルクティを飲んだことがない。
また機会があれば飲みたいな、とぼんやりと想い出に耽っていた灯里に晃人が声をかける。
「そういえば、灯里」
「ん?」
「水澤の件は聞いたか?」
晃人の言葉に灯里は首を傾げた。
――――悪魔の件?
眉根を寄せた灯里に、晃人はふっと睫毛を伏せて口を開く。