悪魔のようなアナタ ~with.Akito~



灯里と離れていたこの10年の間で、晃人は自分の心から何かが抜け落ちたことに気付いた。

朝子も含め、どんな女もその隙間を埋めることはなく……。

しかし灯里と再会した瞬間、晃人は自分の心が求めていたものが何かを悟った。

ずっと昔から晃人の心の中で優しく息づいていたもの……。


昔から愛し慈しんできた幼馴染。

晃人が優しい気持ちで接したいと思う、ただ一人の人。


「……灯里……」


晃人はぐっと手を拳に握りしめた。

自分が灯里と一緒に居たいと思うように、灯里も自分と一緒に居たいと思っていたはずだ。

灯里がこんな行動を取ったのには理由があるはずだ。

と理性では思っても、胸の奥から憤りが込み上げる。


灯里が離れようと思うなら……。

……どうあっても離さないということを、知らしめるまでだ。


憤りはやがて炎のような激情へと変わっていく。

出張が嘘なら、灯里は恐らく市内にいるだろう。

晃人は踵を返し、急ぎ足で繁華街の方へと向かった……。


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