悪魔のようなアナタ ~with.Akito~



灯里は言いかけ、俯いた。

朝子は九条グループの社長の娘で、本物のお嬢様だ。

――――自分とは違って。


と俯いた灯里の顎に晃人の指が伸びる。

くいと顔をあげられ、灯里は息を飲んだ。

見ると、晃人が穏やかな笑顔で灯里を見つめている。


「……っ、晃くん」

「気にするなと言っただろう?」


晃人は灯里の心を包み込むかのように笑いかける。

灯里はぼうっと晃人を見つめた。

晃人の瞳を見ているとこの世に怖いものなど何もないと思える。


「九条など俺の力でどうにでもなる。お前は何も心配するな」


力強い晃人の声が灯里の心を鎮めていく。

この声を聴いているだけで不安が消えていくような気がする。

灯里はこくりと頷き、再び箸を動かし始めた。


< 156 / 171 >

この作品をシェア

pagetop