悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
『少し情報をリークしただけだ。それに買収は親父の決裁がなければできないはずだ。違うか?』
『まあな。しかし晃人……』
電話の向こうで、父は大きなため息をつく。
『お前があの子のためにここまでするとは、正直思ってもみなかった』
「……」
『お前をここまで変えるだけの力が、あの子にはあるということか……』
父はしみじみと、少し疲れたような声で言う。
やがてしばしの沈黙ののち、父は続けた。
『今度、あの子と一緒にうちに来なさい。私もあの子に謝りたい』
「親父……」
『吉倉さんの家にも今度挨拶に伺おう。いいな、晃人?』
父はどこか昔を懐かしむような声で言う。
晃人はその唇に笑みを刷き、頷いた。
「ああ、わかった」
晃人は言い、電話を切った。
携帯を机の隅に置き、足を組んで天井を見上げる。
――――これでもう、障害はない。