悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
4.運命の人
そして新年度が始まり、4月。
週末の土曜、灯里は晃人とともに山麓で毎年行われている桜祭りに来ていた。
車で一時間ほどの場所で開催される桜祭りには近隣の街からも人が集まり、会場は大勢の人でごった返している。
幼い頃から、二人はよくこの桜祭りに参加していた。
「すごいねえ~」
灯里はぼうっと桜を見上げながら歩いていた。
会場の奥にある『桜のアーチ』は桜祭りの一番の目玉で、大勢の人が列をなして歩いている。
「危ないぞ」
人にぶつかりそうになった灯里の腕を晃人が慌てて掴み、引き寄せる。
灯里ははっと晃人を振り向いた。
晃人は黒いノータックパンツにストライプのポロシャツを身に着けている。
昔から格好いいなと思ってはいたが、大人になった晃人はいつ見ても目を奪われる格好良さだ。
ちなみに灯里も晃人に合わせ、今日は春らしい薄ピンクのワンピースとニットのボレロを選んでみた。
まだオトナと言うには少々物足りないが、今は無理して大人にならなくてもいいのかもしれないと思っている。
灯里は頬を染め、傍らの晃人を見上げた。