悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
灯里は頬を染め、俯いた。
――――大人になった幼馴染。
晃人は灯里の会社の取締役だ、本来であればこうして食事などできる仲ではない。
けれど。
『お前が、好きだ』
二人で海に行ったあの日、晃人は再会以来二人の間にあった距離感を飛び越え、灯里の心の中に入ってきた。
それから灯里の心はひどく揺れ動いている。
幼馴染だけれど、今はそれだけではない。
晃人の言葉、眼差し、そしてあの時の口づけ。
思い出すと頬が鬼灯のように赤くなる。
「どうした? 灯里」
「うっ、ううん。何でもない」
灯里は慌てて顔を上げた。
晃人はじっと見守るように灯里を見つめている。
昔から変わらないその眼差しに、今はどこか艶が混じっている。
その眼差しに灯里の心はすっと絡め取られそうになる。
いや、もう半分以上絡め取られているのかもしれない……。
胸が止められない勢いで高鳴り、晃人を正面から見ることができない。
灯里はドキドキしながらグラスの水に手を伸ばした……。