悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
『夜更かしになったな、お前も。昔は9時には寝ていたのに』
晃人の言葉に灯里は自分の部屋の窓をちらりと見た。
晃人が隣に住んでいた頃、灯里の部屋は晃人の部屋からちょうど見える位置にあった。
――――小学校の頃。
晃人の姿が窓の向こうに見えると、灯里は窓を開けて、
『晃くーん、遊びに行っていい?』
とよく聞いたものだ。
すると晃人は優しく笑って『おいで』と言ってくれた。
もちろん灯里が試験前の時などは『だめ』とはっきり断ったが。
いつでもどんな時でも、晃人は灯里のためを思って行動してくれた。
灯里が傷つかなくて済むように、灯里が喜ぶように……。
昔のことを思い出すと心が温かくなる。
しんみりした心を振り切るように、灯里は明るく言った。
「だって私、もう26だよ。子供じゃないよ」
『そうだな。……もう子供じゃないな』
晃人は艶を帯びた低いバリトンの声で言う。
その色っぽい声に灯里の心臓がバクバク動き出した。
晃人は高校の頃に変声期を迎え、それまでより数段低い声になった。
そのときも灯里は驚いたものだったが、いま耳にしたこの声は……
――――危険だ。
聞いているだけで腰から力が抜けそうになる。