悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
母の声に、廊下の奥から父の誠三も顔を出した。
玄関先に立つ晃人の姿を見、驚いたように目を丸くする。
「おー、晃人君! 久しぶりだな~」
「御無沙汰しています。お伺いするのが遅れてすみません」
晃人は父に向かい、軽く頭を下げた。
その瞳は懐かしそうに父と母を眺めている。
「ずいぶん雰囲気が変わったな~。もう一人前の男という感じだな」
父も懐かしそうに目を細めて晃人を見上げる。
両親が晃人に最後に会ったのは晃人が大学を卒業した年だ。
晃人はこの辺りでは最も難関の私立大学の経済学部に在籍していたが、卒業後はそのままアメリカに渡った。
それ以来、10年ぶりの再会だ。
「しかし、なぜ灯里と一緒に? 確か灯里は昨日は友達と……」
灯里は昨日、両親に『友達と食事に行く』と言って家を出た。
灯里はさーっと青ざめた。
昨日はそんなことを考えている暇もなかったが、これはいわゆる無断外泊というやつだ。
どう説明しようかと灯里が青ざめた時。
隣にいた晃人が灯里の肩に手を乗せ、にこりと微笑して言った。
「実は今、俺と灯里は付き合っています」
「……え?」
「ご報告が遅れてすみません。また後日、改めてご挨拶に伺います」