悪魔のようなアナタ ~with.Akito~



晃人の言葉に灯里は思わず息を飲んだ。

――――個室。


以前にも晃人と一緒に個室の店に行ったことはあるが、あの時と今では意味合いが違って聞こえる。

黙り込んだ灯里に、晃人は電話越しにくすりと笑った。


『どうした? もっと違う場所の方がいいか?』

「えっ……」


もっと違う場所って……。

なぜか胸がバクバクする。

思わず携帯を握りしめた灯里に、晃人は低い声で囁くように言う。


『お前が望むならそれでもいいが、……そう頻繁に俺の理性を試されても困る』

「……っ!」


灯里は思わず受話器から耳を離してしまった。

艶っぽいバリトンの声に腰が砕けそうになる。

――――やはり、危険だ。

灯里は慌てて言った。


「ふ、普通の店でいいっ!」

『了解。では明日、楽しみにしてる。おやすみ』


くすくすと笑いながら晃人は電話を切った。

――――電話しているだけなのに、心臓がもたない。

昔はこんなことなかったのに……。


灯里はまじまじと携帯を眺め、はーっと肩を下ろした……。


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