悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
23:30。
海を渡る夜風が砂浜の手前に植えられた赤松の枝を揺らして吹き抜けていく。
灯里は晃人と手を繋いで海岸通りを歩いていた。
あれから二人は9時半に落ち合い、海岸通りから少し入ったところにある小さな居酒屋に入った。
和洋折衷の料理を売りにした、小さいながらも瀟洒で落ち着いた佇まいの店で中は全部個室になっている。
『何か食べたいものはあるか?』
『ううん、けっこう食べてきたから軽食でいいかな』
『わかった』
晃人は頷き、軽食と飲み物を手早くオーダーしてくれた。
晃人は灯里の好き嫌いを熟知しており、それは食べ物だけに止まらない。
この間のネックレスも灯里の好みそのものだった。
昔から晃人が灯里に対して選ぶものに間違いはない。
それは晃人が昔から灯里の一番傍で見守ってきてくれたからだろう。
二人は料理とお酒を楽しみ、23時過ぎに店を出た。
少し海岸通りを散歩しようという晃人の誘いに灯里は頷き、海岸へと向かった。