悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
3.嫌な予感
―――― 一週間後。
定時後、灯里はバッグを片手に会社の門をくぐった。
この時期は定時になるともう辺りは真っ暗だ。
冬の冷たい風が灯里の頬に当たり、吹き過ぎていく。
「さむっ……」
灯里は首元に巻いたマフラーに鼻を埋めた。
その時。
道路の角に黒髪の女性の姿を見、灯里は足を止めた。
女性はすぐに踵を返し、角の塀の向うへと姿を消す。
「……?」
灯里は首を傾げた。
ここ数日、帰り際に誰かの視線を感じることが多い。
今の女性だろうか?
灯里は首を傾げつつ歩き出した。
自分が何かした覚えは全くない。
多分誰かと勘違いしているのではないか?
と楽観的に考えていた灯里だったが。
数日後、とんでもない形でその正体がわかることになるとはこの時の灯里は予想していなかった……。