悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
5.懐かしい味
灯里は晃人に連れられ、病院の駐車場へと向かった。
晃人にエスコートされるままジーマの助手席に座り、シートに背を埋める。
俯いた灯里に、運転席に座った晃人は前を向いたまま口を開いた。
「お腹がすいただろう、灯里。家で何か作ってやる」
「えっ……」
「粥くらいなら食べられるか?」
晃人は心配そうに灯里を見る。
灯里はこくりと頷いた。
殴られたのは右側で話すだけでも痛みを伴うが、左側で食べれば大丈夫だろう。
本当は二人で今頃外食しているはずだったのに……。
けれどこうなってしまった以上、今日はもうどこに行く気にもなれない。
「俺のマンションはここから車で10分ぐらいだ。少し休んでいろ、灯里」
「うん……」
頷く灯里の横で、晃人はエンジンをかけて静かに車を発進させた。
車は病院の駐車場を出、市街地の方へと走っていく。