悪魔のようなアナタ ~with.Akito~



あの夜、海岸通りを歩いていた晃人が彼女に向けていた優しさといたわりに満ちた眼差しが今も朝子の脳裏から離れない。

晃人はこれまであんな視線を自分に向けたことはない。


「……っ」


朝子は資料をばさっと椅子に放り、携帯を手に取った。

携帯を開き、アドレスから一人の男性を探し出す。

――――『神園重人』。


朝子は通話ボタンを押し、携帯を耳に押し当てた。

数回のコール音の後、電話が繋がる。


「……夜分申し訳ございません、おじさま……」


もうこうなったら手段を選んではいられない。

この間灯里に対して楔は打ち込んだが、今のうちにその楔をさらに深く打ち込んでおく必要がある。

そのために使える物は何でも使う。

朝子は携帯に向かい、弱々しい声で切々と電話越しに訴え始めた……。



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