悪魔のようなアナタ ~with.Akito~



1月下旬。

灯里は電機設備課の自席で見積書の確認作業を行っていた。

これから3月にかけて商事部は追い込みの時期となる。

灯里以外の課員はほぼ毎日営業に向かい、書類や事務的な部分はほとんど灯里が処理している。


「はーっ……」


灯里はため息をつき、ノートパソコンの画面をぼんやりと見つめた。

頬の痛みも辛いが、胸の痛みの方がもっと辛い。

朝子に会った日から黒いものが灯里の心を痛めつけていた。


――――まさか晃人の婚約者があんなに綺麗な人だったとは思いもしなかった。


性格はともかく外見だけを見る限り、晃人とよく釣り合っている。

きっと体の関係もあったのだろう。

朝子に比べたら自分は遥かに子供だ。

なぜ晃人は、あの綺麗な人より自分を好きになったのだろう……。


「……」


もちろん、自分達は幼馴染だったためお互いのことはよく知っていた。

けれどそれだけで、あそこまで真摯な愛情を向けてくれるものだろうか?


灯里が晃人を好きになる理由はいくらでもある。

けれど晃人が灯里を好きになる理由は、いくら考えても思いつかない……。


「……仕事しなきゃ……」


怪我は大分治ってきたが、心の靄はどんどん濃く深くなっていく。

まるで出口のない迷路に迷い込んだ感じだ。

灯里ははぁと息をつき、見積書に視線を戻した。


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