悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
黙り込む灯里に重人は鋭い視線を向ける。
「あれは将来、私の跡を継いで忍村の重鎮となる人間だ。あれの婚約者もそれにふさわしいお嬢さんでなければならない」
「……っ」
「君の心根は私も知っている。晃人を騙そうとか、そういうつもりでないことは私にもわかる。だが……」
そこで重人は一旦言葉を切り、灯里を見据えた。
逆らうことは許さないと言外に告げる、刃物のような鋭い視線。
灯里は喉を詰まらせた。
「君には……、君と釣り合う人がいるはずだ」
「……おじさん……」
「晃人は10年ぶりに君と再会したことで、懐かしさと愛情を勘違いしてしまったのだろう。一時的な気の迷いだ」
「……っ」
重人の言葉が灯里の胸に突き刺さる。
―――― 一時的な気の迷い。
何も言えない灯里に重人は続ける。