悪魔のようなアナタ ~with.Akito~



――――それから二週間。


灯里は極力晃人と連絡を取らないようにしていた。

電話が来ても『ごめんね、いま体調悪くて……』とすぐに切り、メールが来ても返信が必要なもの以外は返さない。

そして会社では晃人の姿が見えると顔を伏せ、廊下ですれ違いそうになったら進路を変える。

あからさまだと自分でも思うが、どうすればいいのかわからない今はこうするしかない。

こういう時、自分の恋愛経験のなさが身に染みる。

もっとうまく立ち回ることもできるはずなのに、こんな風にすることしかできない自分がもどかしい。


「晃くん……」


晃人の姿を見るだけで胸が締め付けられるように痛む。

もう自分の心も限界かもしれない。

――――この痛みに、もう耐えられない……。

灯里はぐっと唇を噛み締めた。


< 89 / 171 >

この作品をシェア

pagetop