悪魔のようなアナタ ~with.Akito~
その日の夕方。
覚束ない足取りで会社からの帰り道を歩いていた灯里の前に見覚えのある車が止まった。
――――ガーネットブラックのジーマ。
晃人の車だ。
「……っ!」
灯里は反射的にくるりと踵を返し、逆方向へと駆け出した。
もう、自分が何をしているのかよくわからない。
混乱しながら走り出した灯里の後方でパタンと車のドアが閉じる音がする。
やがてカツカツという足音の後、後ろからぐいと腕を掴まれた。
そのまま引きずり寄せられ、顎をくいと掴まれる。
「ずいぶんな態度だな、灯里?」
灯里はその声に息を飲んだ。
はっと視線を上げた灯里の目に飛び込んできたのは……。
――――昏い光を放つ、刃のような晃人の瞳。
苛烈で容赦のないその瞳に灯里は背筋を強張らせた。
晃人が自分に対してこんな目を向けたことはない。
凍りついた灯里の目を見据え、晃人は短く言う。
「来い」