人形の微笑
……もちろん、力を蓄えておくといっても、抵抗したり反撃したりする訳ではない。
『殺されかけた』という確実な証拠を持って、クロアの故郷であるルスカ国へと逃げ延びるのだ。
そして、クロアも私もその身柄を保護してもらえばいい。
これが成功すれば、最も簡単に身の安全が得られるはずだから。
……暗殺者の私はその限りでは無いけれど。
「…………………」
死体を茂みの中へと隠し終えたリリスは、立ち上がると目を閉じた。
そのままの姿勢で短い黙祷を捧げてから、城の方へと歩き出す。