人形の微笑
「今から私はコルトと戦います。ですが、魔法も使えない王子様なんて正直足手まといなんです。
さっさと行ってください」
先程までの出来事が嘘のような、凍った声がクロアの傷をえぐる。
鼻白んだクロアは、何か他に言おうと口を開いたが――、
「必ず、帰るから―――行って」
リリスの静かな声に遮れ、口をつぐむ。
…そして、しばらく逡巡した後。
「絶対、だからね!!」
クロアは何回もリリスに念を押すと、苦しそうな表情でその場から走り去った。