人形の微笑
……リリスがあんな言い方をしたのは、俺に走り出させるためだ。
そんな事はわかってる。
分かってるけど……
「リリス……」
あんなに切羽詰まった顔のリリスを見たのは、始めてだった。
そんな表情を見せたリリスが、心配でたまらなかった。
リリスは怪我もしていたし……。
――けれど今戻れば、リリスの俺を逃がそうとする努力が無駄になってしまうだろう。
愛する人のために戻りたい。
けれど、愛する人のためにも俺は戻ってはいけない。