人形の微笑
「僕に来た依頼は、
『標的を殺すために最大限の努力をすること』
だったんだ。
だから…努力したけど負けた事にして、ある程度戦ったあとに逃げてもらおうと考えてた」
「その割には、銃とか乱射してきたじゃんか」
クロアはコルトの攻撃を思い出して、身震いした。
あんなに死を身近に感じたのは、クロアにとって初めての事だった。
………しかし、
「王子には悪いけど、姉さんが相手をする時点で手加減なんてしてられないよ。
こっちが殺される」
コルトもコルトなりに考えていたらしい。
「それに、姉さんは手加減されるのを嫌うからな。逆上して細切れにされたらたまらないよ」
と言うと、俯いて鼻をすすった。
クロアも俯き、腕の中で[人形]のように身動きしない、リリスの愛らしい顔立ちを眺める。
―――その瞬間、
【主よ、そろそろだぞ】