人形の微笑




「僕に来た依頼は、

『標的を殺すために最大限の努力をすること』

だったんだ。

だから…努力したけど負けた事にして、ある程度戦ったあとに逃げてもらおうと考えてた」


「その割には、銃とか乱射してきたじゃんか」


クロアはコルトの攻撃を思い出して、身震いした。


あんなに死を身近に感じたのは、クロアにとって初めての事だった。


………しかし、


「王子には悪いけど、姉さんが相手をする時点で手加減なんてしてられないよ。

こっちが殺される」


コルトもコルトなりに考えていたらしい。


「それに、姉さんは手加減されるのを嫌うからな。逆上して細切れにされたらたまらないよ」


と言うと、俯いて鼻をすすった。


クロアも俯き、腕の中で[人形]のように身動きしない、リリスの愛らしい顔立ちを眺める。



―――その瞬間、



【主よ、そろそろだぞ】





< 224 / 343 >

この作品をシェア

pagetop