人形の微笑
鐘を鳴らしたように涼やかなルスカの声が、耳に届いた。
ハッ!!と二人が顔を上げると……遠くの森の中に巨大な鉄柵がそびえ立っているのを見つけた。
それは、イリカ国とルスカ国を隔てる壁――国境だ。
……俺が最後にこれを見たのは、いつだったっけ?
クロアの胸に、そんな懐かしさと疑問が込み上げたその時……
「あの、ルスカさん」
【ルスカで良い】
唐突に、コルトがルスカに問い掛けた。
「ルスカって……これから行く、ルスカ国が奉ってる神様……ですよね?」
【そうじゃ】
「でもルスカ国に入ったら、『ルスカ』って呼ぶと国の名前と区別つかないんじゃないですか?」
「確かに、わかりづらい……」
【……一理あるな】
「……だから【ルスカ】の名前を縮めて【ルカ】って呼んでもいいですか?」