人形の微笑
「…………?」
リリスが、音のした方向に顔を向ける――…と同時に、
「…ルスカ国第三王子、クロア・ディーネ様のおなーりー」
そんなお触れと共に、クロアが広間へと姿を現した。
かなり緊張したような表情で上座に座るその姿は、イリカ国で見た最後と何も変わらない。
「…………っ」
それを見た、リリスは。
久しぶりに顔を見れた喜びと、
決して結ばれる事のない運命と、
そう分かっているのに……やはりクロアに感じてしまう愛しさに、
心が潰れそうになった。