人形の微笑



「…………?」


リリスが、音のした方向に顔を向ける――…と同時に、



「…ルスカ国第三王子、クロア・ディーネ様のおなーりー」



そんなお触れと共に、クロアが広間へと姿を現した。


かなり緊張したような表情で上座に座るその姿は、イリカ国で見た最後と何も変わらない。



「…………っ」



それを見た、リリスは。



久しぶりに顔を見れた喜びと、


決して結ばれる事のない運命と、


そう分かっているのに……やはりクロアに感じてしまう愛しさに、



心が潰れそうになった。



< 303 / 343 >

この作品をシェア

pagetop