人形の微笑



桜色の唇からこぼれ落ちる、


氷柱を一本ずつ弾いたかのような、透明な声色。


たどたどしくはあるが、淡々と旋律を口ずさむ姿に、


「……………っ!!」


今度は、王子が驚愕する番だった。


何故なら、


『か、可愛い……っ!!』


心なしか瞳をキラキラと輝かせ、拙い様子で唇を動かすリリスが、


何とも愛らしく感じられてしまったから。


………それが例え仏頂面だったとしても、この際関係ない。



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