君に、この声を。
「え、今年の伴奏、智那がすんの!?」
後ろから結構な大きさの声が聞こえてきた。
振り返ると、いつもより120%増しの大きさの目を見開く怜がいた。
「何かご不満でも?」
「いやー、智那なら本番にミスり兼ねないなと思ってさ」
「サイッテー!」
ほんとにデリカシーの欠片もないやつ!
これでも、その言葉は致命的なんだから。
ふてくされた顔をしていると、怜がそれに気づいて笑って私の肩を叩いた。
「ウソウソ。冗談だって」
「別に気にしてないし」
何を根拠に言っているのか自分でもわからないほどの見え見えの嘘を、よく言えるもんだ。
我ながら感心する。