君に、この声を。
「え、せんせーもきいてないの?」
「いつものことよ」
思いの外2人の声が大きくて、私もピアノの前へ近づいていく。
「るなが連絡してくることなんか、滅多にないわ」
崎田先生の声のトーンは、明らかに低かった。
表情だって、奏太と話していたときとは違って、眉間にシワを寄せていて、快く思っていないことがまるわかりだった。
「智那、きいてない?」
いきなり話をふられたから、一瞬なんのことかわかならかった。
少しして話しかけられたのが私だと気づくと、私は急いで首を横にふった。
それを見て、崎田先生が小さくため息をついた。