君に、この声を。
「どうにかなんないの? あの気まぐれさ」
るなの話題を持ち出した瞬間、崎田先生の機嫌が悪くなった。
先生がるなのことをよく思っていないのは明らかだった。
「まぁまぁ。るなだってたまたま――」
「初めてじゃないのよ?」
怜の言葉を遮り、崎田先生が言った。
その声は、さすが声楽専門の音楽教師で、腹のそこから出ていた。
「とにかく、るなについては考えなきゃいけないわね」
「待って」って、ここで言えればよかった。
でも、臆病な私にはそんなことは無理で。
るなのことをかばうこともできないまま、練習は始まっていった。