君に、この声を。
「なんか用ですか?」
廊下の奥の、窓から差し込む光がまぶしいところに部長はいた。
細い赤ブチのフレームのメガネ。
いかにも優等生って感じの結ぶ位置が低めの一つ結び。
前髪はパッツン。
私と比べて結構な長さの長いスカート丈。
『The 優等生』
森可奈芽(もりかなめ)。私たち、吹奏楽部の部長。
はっきり言って、この人が苦手な人は多い。
冗談が通じないのは当たり前。
冷たく尖った氷のような視線と言葉。
でも、頼んだことは何でも責任をとってやり遂げるから、先生からの信頼はあつい。
かと言って、先生たちが信頼する人と私たちが信頼する人は、必ずしも一致するわけでもない。
私にも苦手意識が部長にはあった。